ボーンホルム島

この日も薄曇りだった。フェリーでボーンホルム島へ渡るため、早朝コペンハーゲンを後にする。
全長16kmあるエーレスン海峡橋を渡りスウェーデンに入国。スウェーデンのマルメからさらに車を走らせイスタード(Ystad)のフェリー港へと急ぐ。夏休みを過ごす家族連れの車が、すでに列をなしていた。以前は3時間以上の時間をかけて島へ渡ったと聞いていたが、現在はその半分たらずで目的地のRonneに到着する。海上でほんの数分間の免税ショップがある。乗客は座席から立ってこのわずかな隣国との境界線上で1ダースのタバコを買いに走った。

Ronneの街

港から赤い屋根のRonneの街並みが見える。教会を中心に開けた小さな街だ。太く曲がった黒い木を組んで、赤や黄、水色、橙と色とりどりのペンキで壁を塗った古い民家が並んでいる。鮮やかなピンクの濃淡の芙蓉が、その濃い柱にくっきりと夏を象徴していた。誰も考え合わせないような色合いが偶然にも、この土地を照らす光と空や風と空気によって調和を生みだしていた。石畳の道からそれほど高さのない窓にはキャンドルやセラミック、ガラスの器などが飾られている。家々の窓辺にはこの島の作家たちの作品が、外へ向けてなにげなく飾られていた。

島の風景

ボーンホルム島はバルト海に浮かぶ岩盤の島だ。薄いピンク色の花崗岩がこの島の石で建築物の柱や庭の敷石などにふんだんに使われいる。島の周囲はガラスの粉のような白砂の海岸線がどこまでも続く。ことにBalkaから Boderneの海岸線は広い砂丘地帯だ。波際を散歩した後、松林の砂丘をのぼると、たちまち無音の世界になる。林の中を素足で歩いていると砂が自分の体重できゅっと締まる感触が心地いい。松の香りを胸いっぱいに吸い込むと体が楽になっていくのがわかった。
島の端と端をつなぐ道路の周辺は平らな麦畑で、所々に風力発電機が威圧的に立っている。他に高い建造物は見あたらなかった。ボーンホルム島での1日の天候は目まぐるしく変化した。島のどの場所にいるかによっても違いは大きかった。朝から夜までの間に日本の四季がうつり変わるかのように、午前中は霧でも海から強風が吹いてきて、雲が流れ、日中から太陽が出て暑くなったかと思えば、日暮れ時には冷えびえとして来て、海から重たい雨雲が運ばれ、やがて雨が降る。天気の予測は不可能だった。海と地平線に開かれた地形の上では風も雲もただあわただしく通り過ぎていくのだった。