ルイジアナ美術館

コペンハーゲンから車で北へ向かって約40分ほどのシェラン島に友だちが案内してくれた。便利のよい街中の中心の美術館は自分で好きなように回れるからとわざわざ少し離れたところにつれて行ってくれたのだ。丘に建ち、青く澄みわたるエアスンド海を一望できる緑に囲まれた美術館は1958年に開館した。こんなに気持ちのよい美術館があるだろうか。20世紀を代表する現代美術作品の多くを収蔵しており、最大の目玉に彫刻家として知られるアルベルト・ジャコメッティのコレクションが一室ある。美術館に入ると明るいガラスの回廊を通っていく。自然と作品がガラス一枚をへだててみごとなまでに融合されている。屋内のピカソ、ウォーホル、ラウンシェンバーグ、クライン、キーファーなどの作品と、屋外庭園に設置されたアレクサンダー・カルダーの作品はルイジアナ美術館のシンボルになっているし、他にもヘンリー・ムーア、マックス・エルンストなどの作品が自然散策とあわせて楽しむことができる。もし、こんな美術館が自分の住んでいる家のすぐそばにあったら、毎日でも通いたくなるような恵まれた環境なのだ。
この旅で、有名無名を含めて多くのギャラリーや美術館に立ち寄った。そのひとつ一つをとりあげることはしないが、ついでに一つだけ街の中心にある博物館のことを書き留めておきたい。ニュー・カールスベア博物館はフランス印象派を集めた展示室などがとても魅力的で、屋内に植物園のように樹木が植えられている。ルイジアナに比較するとアカデミックで落ち着いた空気がただよっているが、どちらも植物や自然採光の明暗をうまく利用して訪れた人に作品だけではない豊かさを与えてくれると思う。

louisiana.jpg

louisiana02.jpg

louisiana03.jpg

louisiana04.jpg




デンマーク王立図書館

旅の途上で図書館にたちよることほど楽しいことはない。ヨーロッパを旅していると、とてつもなく大きく、古臭ただよう図書館に出会う。修道会のような密室に積み込まれた本棚や、大学の古典的な図書館。ヨーロッパの国々を支えた多くの思想家や宗教家たちのある意味で権威の象徴ともとれる。
さて、コペンハーゲンは運河の街だ。舟で運河をめぐっていると煉瓦色の屋根と錆びた銅色の屋根が、彩り美しいコントラストをはなっているのがよくわかる。古典的な街の風景の中にぽつりぽつりと現代建築が顔をのぞかせているから面白い。そのなかでも目を引くのが通称「ブラック・ダイヤモンド」と呼ばれる新しいデンマーク王立図書館だ。1999年にシュミット・ハンマー・ラッセンにより設計された。屋内は吹き抜けの天井で、ガラスばりの側面から運河が見渡せる。図書館といえばアカデミズムにのっとり、厳かで閉じた厳粛なイメージが強いが、ブラック・ダイヤモンドはそれをくつがえすように明るくオープンでモダンな環境が提供されている。公共性が外にむかって開かれるという意味では図書館の機能がつつぬけで見渡せるという点に自由さを感じる。

lib00.jpg

lib01.jpg

lib02.jpg

lib04.jpg

lib03.jpg

アルネ・ヤコブセン 100 ar

わたしがコペンハーゲンを訪れた夏は建築家でありデザイナーでもあるアルネ・ヤコブセンの生誕100年のイベントが開催されていた。1902年にユダヤ人の家系に生まれたヤコブセンの「スワンチェア」、「エッグチェア」は目にしたことのある人も多いことだろう。建築物は容易に実際を見ることは難しい。ミース・ファン・デル・ローエに大きく影響を受けたといわれる、ヤコブセン建築をこの旅でいくつも見ることができた。ラディソンSASロイヤルホテル、テキサコのガソリンスタンド、ベラヴィスタ集合住宅、ベルビューシアター、スラレド市庁舎、デンマーク国立銀行。かなりかけ足ではあったが、友だちが車ですべてを回ってくれた。この親切は忘れられない。デンマークの古くからの民家は自然のままの太い木を柱に、壁はペンキで橙や黄、青や緑に塗られ、煉瓦色の屋根が印象的である。古い民家の美しさは、暮らしていた人の生き様や工夫が見えて楽しいものだが、そうした牧歌的、あるいは民族に由来する美ではなく、スタンダードにミニマムにデザインをしていったものの美しさもこの小さな島国には共存している。モダニズム建築の様式を取り入れた白い箱形の建築物は、やはり普遍的な美しさを圧倒的に感じずにはいられなくなるのだった。
途中、男性のペンネーム、アイザック・ディーネセン、カレン・ブリクセンの家の前も通過した。「あそこはカレン・ブリクセン邸だよ」と教えてくれた友だちの説明を聞いて、一時期、愛読した「アフリカの日々」の作者もこの国から生まれた人だったのだと、ふいに思い出した。

jacobsen01.jpg