SAS

2002年7月16日は台風の朝だった。閑静な空港の窓ガラスに雨と風が激しく殴打している。刻々と離陸の時間が迫る。けれどもゲートは閉ざされたままだった。1時間遅れでSASは北に向かって飛び発った。
ぶ厚い雲を抜けると、真夏の太陽が照りつけていた。この空模様はすべてガラス1枚を挟んだ「あちら側」のでき事だった。

コペンハーゲン国際空港

飛行中の体は、浮游感をお腹あたりに抱え込んだようになる。その感覚から解放されたのは、10時間40分後だった。スリリングな島の空港への着陸は、海に突っ込んでいく感じだった。
SASを降りたって自分の足で確かに踏みしめた一歩は木の床だった。地面を忘れかけていた足に心地よい感触がよみがえる。"木のぬくもり"と人は言うが、実感として初めてこのことばを納得した瞬間だった。空に向かって開かれたガラスと木が共鳴しあうコペンハーゲン国際空港。設置されているシンプルな椅子とライトは空間に対話を生み出していた。
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